現代中国 日常生活概要 №5~№8 読めば生活感が分かる♬

John Nan
Jun 19, 2021

china

Photo by K Hsu on Unsplash

5. 子供は祖父母が 6.スマホ支払い 7. 濃い家族親戚関係 8. 人民日報系の「環球時報」とは?

以下は、私の本「ライブSNS時代の中国:人・街・笑顔」からの転載です。分量が少ないので、Amazon出版規約上の問題はないことをサポートで確認済みです。

▼ 子供は祖父母が見る家が多い

中国では、夫婦共働きの家庭が多いんです。特段の理由がないのに、女性が日本で言う、いわゆる、「専業主婦」、となっている家庭は、本当に少ない印象です。

小学生がいる家は、保護者が子供を学校へ送り迎えしている事が多いと思います。学校には給食がありません。昼食を自宅で食べさせる家が多いので、昼にも学校への送り迎えがあると思います。中国では、勤労者世代のほとんどの家庭が共働きですから、自分で小さな子どもの世話ができないので、祖父母が同居して、孫の面倒を見ている世帯が多い感じです。この点は、中国の人たちの生活の、日本との、とても大きな相違点だと思います。おもてを歩いていると、ピンク色の地に、ディズニーのシンデレラのキャラクターがあしらわれた、ビニール製のリュックを背負った子供(女の子の場合)と、その子と顔がよく似た、皺の目立つ年配者が、一緒にてくてくと往来を歩いている、というのは、本当によく見かける光景です。

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【写真0–2説明】 年配の人と、子どもが一緒に往来を歩いている例です。たぶん、子どもと、そのおじいさん、という組み合わせと思います。この写真に写っているのは、本文で書いたような、シンデレラじゃなく、アナと雪の女王だと思いますが、ディズニーキャラクターの、ピンクのリュックです。

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▼ スマホ支払いについて

日本のスマホ支払いって、ご存じのように、PayPay(ペイペイ), メルペイ、楽天ペイ、ファミペイ、。。。とまるで早口言葉になりそうなくらい、種類がいっぱいあって、いわば戦国時代のようになっていますよね。これに対して、中国のスマホ支払いは今のところ、ほとんどが、日本で「アリペイ」と呼ばれている「支付宝」(zhīfùbǎo)、そして日本で「wechat(ウイチャット)支払い」と呼ばれている「微信」(wēixìn)、この二つにはっきりと集約されています。ほぼ完全に「2強体制」といえます。中国語の読みの音は、それぞれ「チーフ・バオ」、「ウェイシン」だと思っていただいて、だいたいOKです。

両サービスとも、例の四角形のまだら模様のQRコードを使ったシステムです。店側が、日本でもお馴染みの、あのイカみたいな形状のコードリーダーで、お客さんの携帯に表示されたQRコードを読み取る方式か、または逆に、お客の携帯のカメラで、お店のQRコードを読み取る方式、のいずれかです。後者のほうが、資本の少ない店向けの簡易方式、という感じです。

都市部では、いま、50代以下の人だと、支払いはほとんどが、現金じゃなくて、スマホでの支払い、なんじゃないかと思います。列車チケットの窓口での購入、公共料金のネット支払い、などもスマホでOKです。道ばたの屋台でさえ、主人のスマホに支払える場合が多い、というような状況になっています。ただし、現金払いは、今も、極く少数の例外を除けば、ほぼ全ての店で可能なんじゃないかと思います。考えてみれば、国が発行する通貨を受け付けない、というのは法律的に問題があるのじゃないでしょうか。

日本でたまに聞く「中国のスマホ支払いの普及は、偽札が多いためだ」、という説ですが、私が思うに、明らかに眉唾(まゆつば)です。毎年、中国で「ダブル11」と呼ばれている11月11日に、一日(いちにち)に日本円にして1兆円以上を売り上げて、日本でもニュースになるTaobao(タオバオ)という、中国の最大のネットショッピングモール。そこでのネット上の支払い手段は、実店舗でスマホ支払いが始まるずっと前から、長年「支付宝(チーフバオ)」、でした。そんなわけで、支付宝はスーパーなどの実店舗でスマホ支払いが始まった時には、すでに庶民に慣れ親しまれた、一種のインフラ状態だったわけです。急速に普及した理由は、ほとんどの中国人が既にネット上で使い慣れていたものが、実店舗で使われ始めると、圧倒的に便利なので違和感なく瞬時に普及した、という以外ないと思います。だって設定さえ終わっていれば、あとはワンタップだけなのですもの。すごく便利、というに尽きます。

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【写真0–3説明】 スマホ支払いアプリ支付宝(チーフ・バオ)のホーム画面です。振替、充値中心(スマホ通信費のプリペイドチャージ)、余額宝(残高を投資できる少額の投資信託のようなもの)、その他、生活支払い(電気水道ガス)、高速鉄道、飛行機チケット購入、などが並んでいます。正直のところ、アプリの洗練度も便利さ(社会環境による)も、PayPay(ペイペイ)とはちょっと同列に語れないくらい良い感じです。

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▼ 濃い家族親戚関係

中国の家族親戚関係は、日本に比べると、繋がりがとても強い感じです。

日本では、成人した子供は、盆暮れに帰ってくる以外はほとんど連絡がない、という家庭の方も少なくないのではないでしょうか。一方、中国の家族は、成人後も、親子の間の連絡と行き来が、ずっと多い印象です。母親と娘が手を繋いで歩いている、というのは、たまに見る光景ですし、母の日、父の日ともなると、私のSNSは、色んな友達の、お母さん、お父さん、ありがとう、みたいなメッセージや写真で溢れます。

カップルも、結婚後は二人の寝室に、結婚の時に撮ったドレスの正装、あるいは今風の、映画スターの「愛のツーショット」っぽい芸術写真を額(がく)に入れて飾ってある習慣のようです。友達に、ホントにそういう習慣があるのか?と聞いたら、逆に「日本はないの???」と聞き返されたことがあります。

春節など、年中行事というか、特別な日に、親戚の間での互いの行き来も多いです。

▼ 日本の新聞でよく引用される、人民日報系の「環球時報」とは

日本のメディア報道で出来上がる中国の像が、現地で見る実際の中国の姿と、ほんとうに滑稽なほど大きく違う、という事は、この本の大きなテーマの一つなんです。如何(いか)に違うかは、この本のシリーズ第3巻で、詳しい実例をたくさん挙げて、皆さんに体系的にお話ししようと思っています。

日本のメディア報道のおかしな事の一つに、「環球時報」という中国メディアの扱いがあります。「環球時報」は、日本の常識からすれば、ひじょうに特殊な新聞なんですが、日本で、突出してよく引用されている中国の新聞であるにも拘らず(かかわらず)、どういう新聞なのか、日本のメディアが、受け手に説明しないので、大きなミスリードが生じているように思います。

SNSのツイッターだと、@bci_さん 2012年8月22日 『環球時報は、人民日報傘下だけれど、元々収益性を高めるために作った大衆向けの新聞ですから、煽りが専門みたいなものです』、というのが代表的な意見といえるでしょう。

大手メディアでは、「環球時報」自体を取材した、毎日新聞の中国総局(当時)の、工藤哲(くどうあきら)、という記者が、その感想を、著書に書いています。『取材をしてからは、この新聞を読むたびに、参考にはするが内容は公式見解としてそのまま真に受けるべきではなく、「体制派に近い層が普段大声では言いにくい本音の一つ」といった感じではないか、と考えるようになった』 [「中国人の本音」(平凡社) 2017 ]

また、中国メディアの研究者で、読売新聞の元北京支局長、現北海道大学名誉教授、桜美林大学教授の高井潔司(たかいきよし)教授は、「メディアが作る相手国イメージ ―日中対立の一側面」、という講演で曰く、(以下引用)「この新聞(著者注:環球時報)がどのような情報に基づいて日本報道をしているのか、少しでも調べて見れば、何とも無責任な新聞かがわかります。日本の夕刊タブロイド紙レベルの新聞です。こういう新聞の論調をまともに紹介することは極めて危険であることが分かります。(著者注:この後、次段落へ) 例えば、環球時報は日本に特派員を置いていません」(引用終り)。

他、Record Chinaという日本の、中国情報を掲載するサイトは、2013年11月29日の記事で、同日、環球時報が、「日本の戦闘機が中国の防空識別圏に進入すれば(中略)米ソ冷戦時代のようなし烈な空中戦が行われるだろう)」、との社説を掲載した、また、2015年5月25日のロイターの記事は、環球時報の記事について、『中国共産党系メディアは(中略)米国が中国に人工島建設の停止を要求することをやめなければ、米国との「戦争は避けられない」とする論説を掲載した』と、それぞれ書いています。

中国共産党の政治家の本音が、そんなに簡単に、「米中戦争」、ということはあり得ないでしょう。ですから、事実なのは「環球時報」が人民日報系列の新聞、というところまでで、論説が共産党の意向、というのは間違いで、SNSでも書かれているように、人民日報では皆読まないから、収益を上げるために大衆向けに作られた国際情報紙で、論調的には、日本で言えば産経新聞に近いような、しかし、事実確認や論説の奔放度では、もっとゆるい新聞、というのが、実際の姿と思われます。ただ中国は、日本のように秩序だった社会ではないので、環球時報は、人民日報系列であり、共産党に人脈もあることから、たまに一部の共産党幹部に比較的近い層の、多少の観測気球的なものが、どこかの人脈から、この新聞を通じてされることもある、という程度の感じではないかと思っています。また、中国は、実質的に一党支配なので、当然、共産党の中にも、実に様々な考えの人やグループがある事も、考えておく必要があると思います。また、日本の新聞の社説は、編集委員の合議制で書かれている、と思いますが、環球時報の社説は、同紙の編集長が個人で書いているようです。部数も、人口14億人の中国で、200万部程度でしかありません。(日本の読売新聞で800万部弱くらい)。

私の印象では、日本の新聞記者は、受験秀才型というか、教科書的なものの考え方の人が多く、日本国内の考え方から、人民日報系、と聞くと、それだけで、権威あるもの、と見なしている人が多そうです。その上、環球時報にこのような論説が掲載された、という記事を書くのであれば、記事の翻訳や要約だけで済むため、取材が楽です。人民日報系という事で、報道に「それらしい権威付け」もできます。また、論説が往々にして煽情的であるため、日本の読者の関心を惹きつけるのも容易で、自分の書いた記事が注目され易くなります。このように、色んな面で、ある意味便利なことから、無意識の面もあるでしょうが、好んで引用されている、という様な実態を感じます。多くの日本国内の方は、そんな実態を知らないまま、環球時報を引用した記事を、そのまま、言葉の通りに真に受けて(まにうけて)、「中国怖い」、と思って読んでいる、というのが日本の現実であるような感じがします。

以上は、私の本「ライブSNS時代の中国:人・街・笑顔」からの転載です。

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