現代中国 日常生活概要 №9~№12 読めば生活感が分かる♬

John Nan
Jun 29, 2021

以下は、2021年2月26日にAmazonで出版した私の本、「ライブSNS時代の中国:人・街・笑顔」、からの転載です。

全部で10章構成のうち、冒頭の第0章としている部分の23項目のうちの、9~12番目の4項目を掲載しています。他の項目は、文末にリンクをおいたので、読了後、そちらをご覧ください。

9. 反日教育は本当にあるか 10. 宅配便は団地の荷物集積所で受取る 11.宅配便の送り状は全部電子化 12. 病院のレントゲン写真は患者個人に

Photo by 晋欣 牛 on Unsplash

▼ 反日教育は本当にあるのか

日本で多くの人が、中国に対するイメージとして持っている、「反日教育」って、本当にあるのでしょうか。私は、以前、特に意識的に、これを調べる目的で、ある時、中国人の友人、知人に、その事を集中的に聞いてみたことがあります。中国各地にいる、たぶん8~10人くらいの、主に20代から30代の友人、知人に、それぞれ単独で、ひとり十分か十五分程度も使って、根堀り葉掘り、かなりしつこく聞いてみたんです。結果として、どうだったか? その時、私は、日本国内の日本人が一般に考えているような、「反日教育」のイメージに相応するような教育は、実際にはない、と、ほぼ確信しました。このことは、やや説明の難しい、複雑なところもあって、三巻以上にする予定の、この本のシリーズの続刊で、別に詳しくお話ししたいと思っていますが、少なくとも、日本国内には、中国国内の教育について、かなり大きな誤解があります。特に、2012年に、島購入に対する抗議のデモが、中国で多数起こった時は、あんな抗議行動が起こるのは、反日教育が原因だ、という意識が日本国内でひじょうに強かったように思います。あるいは、最近は半分忘れ気味かもしれませんが、いつまた、その意識が同様の強さでよみがえってくるかもしれないので、私の知るところをお話ししておこうと思うのが、この項目です。

このように書くと、国内で、新聞やテレビ、権威ある人たちも含め、あれだけ、たくさんのメディアや人が、(日本でいう)「反日教育」、について言及していたのに、それがナイなんて、ありうるだろうか?と思われる方も多いと思います。

端的に事実だけお話ししますと、その聞き取りで、私の中国人の友人、知人で、それが「ある」、というラインで話をした友人、知人は、聞いた全員のうち、一人もいませんでした。それだけでなく、多くの人が、「何だそれは?」、という、きょとんとした、あるいは驚いた表情や口調だったんです。ポカンとして、一瞬置いて「ない、ない」、と否定が入る感じでした。なかには、笑い出した人もいました。突然、話相手が、わけもわからない事を言いだした、という感じだったんです。

人民教育出版社、という出版社が出版し、上海で使われている、高校の歴史教科書も、買って読んでみました。三分冊になっている、同教科書の、合計約400ページのうち、抗日戦争に関する部分は、4ページです。このうち、大雑把に言えば、私の判断では、2ページ半は、単なる史実で、戦線でどういう変化があった、とかそういう話です。残りの1ページ半が、個別的な事象の、何を取り上げるかに、判断が入るものになります。その1ページ半のうち、半ページは、日本軍が遺棄した、マスタード爆弾(化学兵器)による、戦後の被害の話です。延長学習、のような小コラムです。1ページ半を多いと考えるかどうかは、見方によると思いますが、日本軍が中国国内にいた十数年の内に、日本に対して嫌悪や怒り、憎悪を感じさせるような事例は、中国国内に無尽蔵にあったはずで、この分量を考えると、日本人が国内で持っている、中国では、「反日教育」がされてきた、というイメージは、実際と比べて、非常に誇張されていると思います。もともと、対外戦争加害を伝える事には、極めて消極的だった日本の学校教育やメディアですが、時間による風化によって、ますます日本人は当時を知らなくなっています。しかし、まじめな歴史書を読んでいる方は、当時の日本軍は、補給が不十分だったため、民家の略奪が常態化していたり、女性も含めた民間人の殺害があったりというような、無数の日本軍の行為があったことを、分かっていることと思います。それを考慮すると、この記述の量は、私には、反日教育、という日本国内での言葉のイメージと、実際には、著しい乖離があるように思わせます。

さらに、同じ人民教育出版社の制作した、マルチメディア教材の、中学用の歴史科目の、授業のビデオも探し出して、見てみました。その抗日戦についての授業の部分は、上記の高校の教科書の内容以上に、事件名と、その概略の紹介などのような、試験対策のような感じの強いものでした。その一コマ(ひとこま)の授業を、全編を通して見ましたが、「反日教育」、というような感じは、特にまったくありませんでした。また、上海の大書店で購入した、華東師範大学出版社の、「九年義務教育課本 八年級 第二学期 (試用本)」(たぶん中学二年相当と思います)という、歴史の教科書では、両側にビルが立ち並ぶ日本の大通りと、大阪の松下の工場の、大きな写真が掲載されている、日本の高度成長を紹介したページがあります。こちらでは、日本は、アメリカに次ぐ世界第二位の経済になった、日本の文化は西洋と違い、家族と団体を重んじていて、戦後、日本国民は、国と企業の振興のため、個人の得失を顧みず、努力奮闘し、勤勉に働き、それと資本主義の生産管理方式との結合は、日本経済の飛躍の一つの重要な要因となった、というような記述があります。概ね肯定的な雰囲気です

友人たちの話では、学校の授業で、日本の侵略に関する話は、通常の歴史授業と、その他に、国語の教科書でちょっとあるくらいで、かつ事跡が中心で、またそれら以外に、抗日戦や日本の悪いところを教える、特別の授業時間はない、ということでした。

この問題は、少し、説明が難しいところがあるので、なるべく、このシリーズの第二巻以降で、取り上げて、詳しくお話ししたいと思っています。

▼ 宅配便は、団地に荷物集積所があり、そこで受け取る

地域によって違うかもしれませんが、中国では、宅配便は、個別配達ではなく、どこの地域にもそれぞれに十社くらいとか、たくさんある宅配会社が、みんな各団地(小区)の中にある、1–2箇所の宅配便集積所に荷物を配達。荷物を受取る人は、自分が住んでいる団地の中の集積所まで取りに行って、事前にスマホにショートメールで送られてきている受取番号を見せて、受け取る、という状況になっているところが多いように思います。(上海は違うかもしれません)。 中国はこのような、技術を利用した社会慣行の変化はとても速いので、2020年代になってまた変わっていく可能性はありますが、ここ2年から3年程度は、そんな感じです。

また、宅配ロッカーのようなものも、広く普及しています。私の推測に過ぎませんが、各省の省都クラスの都市では、すべての団地にあるのではないか、というレベルの普及度の気がしています。これは、宅配業者が団地の中に設けられた宅配ロッカーに配達、つまり業者は荷物をロッカーに入れて、受取人はスマホで受け取った受取番号や、スマホアプリでの認証で、ロッカーから荷物を取り出す、という方式です。

いずれにしても、こうしたシステムだと、宅配業者は、多数の受取人(うけとりにん)に宛てられた、数十から百個以上の荷物を、一度に一箇所に運んで終わりです。日本のように、各戸に配達するより、どれだけ速いか分かりません。再配達もありませんから、日本に比べて格段に効率化された配送ができ、配達員の肉体的、精神的負担も、ずっと少なくなっています。

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【写真0–4説明】 団地、小区の中に設置されている、宅配便受け取りボックスです。よく見ると、大きなボックスから小さなボックスまで、サイズが色々あるのが分かりますね。

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▼ 宅配便の送り状はほぼ無くなった。全部電子化

たしか、2017年か2018年くらいまででしょうか、中国でも、宅配便の送り状は、日本と同様に手書きでした。最初に大手1社がそれを電子化し、その後、3ヶ月か半年くらいの間に、瞬く間に(またたくまに)、私の使う宅配会社の送り状は、すべて電子化されてしまいました。送り状は、スマホアプリか、パソコン上で入力するようになったのです。

中国の宅配便事情については、第2巻以降で、章を設けて、少し詳しくお話する予定です。宅配便は、いまでは、日本と違う面がひじょうに多く、中国社会と日本社会の違いの縮図として、たいへん参考になります。日本国内の方は、中国で送り状を電子化したというが、じゃあ年寄りなどはどうしているのか?という疑問があるかと思います。そういうことも、第2巻以降の章で、別途ご説明したいと思います。中国のIT利用については別冊を設けて説明する可能性もあります。

▼ 病院のレントゲン写真や検査結果は、患者個人にくれる

中国で日本と違って、いいな、と思う事のひとつに、病院で撮ったレントゲン写真や検査結果を患者個人にくれる、という事があります。地下鉄などで、大きなレントゲン写真を手で下げた人が乗っているのを、よく見ます。国の規則なのかよく分かりませんが、レントゲン写真を、患者個人に渡している病院が多いのではないか、と思います。(無料です。私自身、もらって帰ったことがあります)。MRIの結果をもらっているのも見たことがあり、たぶん無料ではないかと思います。

また、私の経験では、病院に行くと(元々持っていない場合)、病歴手冊という、わら半紙みたいな、あまりよくない紙質の、とても薄い冊子みたいなものを、1元(げん)だか、ひじょうに安い価格で買わされます。この病歴手冊は、私の街では病院を越えて使い回せます。(上海では社会保険の医療保険に加入していると、医療保険から市内の医療機関[大病院?]で統一的に使用できる、診察記録冊子を貰えるようです)。医者に見てもらうと、医者はその冊子に、日本ではカルテに書かれるような記録を書きます。患者はそれを持ち帰ります。日本人がこれを聞くと、日本の「お薬手帳」、を思い浮かべると思いますが、薬の記録ではなく、カルテです。医者自身は、病院用のカルテを、自分でパソコンに記録しているのかもしれません。病院が換わっても、治療と検査の記録を引き継ぐことができますので、中国のこのシステムは、医療費抑制などに繋がる(つながる)のではないか、という気もします。患者自身も自分の体の状態について、分かりやすいでしょう。

終わり

他の項目へのリンクです。

現代中国 日常生活概要 №1~№4 読めば生活感が分かる♬

1.大学はほぼ全寮 2. 皆 団地住まい 3. タクシーは前乗り。近い人同士の距離 4. 夫婦別姓

現代中国 日常生活概要 №5~№8 読めば生活感が分かる♬

5. 子供は祖父母が 6.スマホ支払い 7. 濃い家族親戚関係 8. 人民日報系の「環球時報」とは?

なお、転載元(私自身の本)である、「ライブSNS時代の中国:人・街・笑顔」の本の内容は、一定部分ずつ、最終的には全編を、逐次こちらに転載、公開していくつもりです。

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