中国のコロナ対策 part1 — China vs Covid19 Information Source

John Nan
Jul 4, 2021
Photo by Patrick Assalé on Unsplash

以下は、2021年2月26日にAmazonで出版した私の本、「ライブSNS時代の中国:人・街・笑顔」、からの転載です。全部で10章構成のうち、本文の10章以外に5つつけた付録のうちの付録3「中国のコロナ対策」の冒頭の一部です。(多少本のバージョンを修正しています。) 付録3には、10項目程度あって、以下は冒頭1項目です。残りの項目のリストは、煩瑣になるので、この文末にリストしておきます。

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日本と比べた場合の、中国のコロナ対策の全体的な印象は、 統制がとれていて熱心、科学的、論理的で、真剣、かつ厳格、というような感じではないかと思います。評価し過ぎか、と思われるかもしれませんが、対人口比の感染者数から見ても、感染防止には効果がほとんどないと言われる布マスクが、しかも遅れて届いたり、接触アプリが実は、かなり長期間、動作していなかったり、デルタ株感染者が増加する中でオリンピック強行、という日本政府の対応との比較においても、庶民の「防いでくれる」、という感覚からすれば、単に客観的な評価だと思います。ただし、これは、武漢で最初に発生した時に、省政府が事態を過小評価して、ぐだぐだして、たいへんな事態を招いた時までのことは除きます。

中国の初期の(現在[2021年2月初]までかもしれませんが)コロナ対応では、ヒトからヒトへの感染があると発表した点、また、「早期診断、早期隔離、早期治療」、が対応の基本方針となったという点で、钟南山(Zhōng Nánshān)、という著名な高齢の医師の果たした役割が大きかったようです。この医師は、SARSの時にこの、「早期診断、早期隔離、早期治療」、を提唱しています。メディアの記事で見る、各地で使われるスローガンには、この三つの言葉の他に、早期発見、早期報告、というのも見ます。このうち、早期隔離、早期治療、は、それらのスローガンには必ず入っているようで、その他に、早期診断か、または、早期発見、が使われ、さらに、それに一つ加える場合は、スローガンを使用する相手によっては、早期報告、が加えられる、という感じをうけます。この钟南山という医師は、ツイッターなどで、人づてにちょっと聞いて、今回、YouTubeで、約30分のビデオを見ただけですが、私もなんとなく尊敬を感じるような人です。YouTube で、Character Documentary “ZHONG NANSHAN” で検索すると、広東のテレビ局が制作した、この人と、この医師を中心とする、2020年3月いっぱいくらいまでの、中国のコロナ対応に関する、約30分のドキュメンタリーが見られます。ビデオは、基本的には、钟南山という、この医師に、焦点が当てられたドキュメンタリーです。なお、钟南山に対してはTwitterで見ると中国人から批判もあります。多角的に見ることも必要かもしれません。

中国のコロナ対応では、少なくとも、「早期発見」、「早期隔離」、この2つは、かなり徹底して行われているように感じます。

日本の大手メディア報道

2021年5月4日 朝日新聞 平井良和

「中国2.6億人移動 5連休 コロナ前の水準に」

2021年6月3日 NHK News Web

中国のコロナ対策 カギを握る徹底した監視と水際対策

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210603/k10013065171000.html

どちらも良い記事です。特にNHKのこの記事は、日本の新聞記事としては、コロナ以外を含めても、出色の記事ではないか、と思います。ボリュームも多いですし、日本国内の中国に関する記事のほとんどにある、中国への偏見と、国内に少なくない嫌中のムードに対する媚(こび)を感じない記事です。よくまとまっています。特に中国のコロナ対策に詳しくない方の場合、全体像を把握するために、第一に読むべき必読の記事、といえると思います。

朝日新聞の記事のほうも、なかなか良い記事で、読んだとき、「いや、ついに出た中国のコロナ対策に対する客観的でまともな記事」(言外の意味は、他のほとんどは客観性を欠いている)という感慨をもったものです。五月の連休の国内移動がほぼコロナ前に近い、という記事。2020年『6月、早くも無症状者も含めた「新たな市中感染者ゼロ」の日を記録。今年4月に発覚した市中感染者も一地域で集団感染した約80人のみだ。大規模なPCR検査と、感染者が出た地域の封鎖を徹底、発覚から数日で検査数は1千万人超に上ることもある 』。このように感染状況と検査の徹底について簡潔的確に指摘。「入国者にも指定のホテルなどで最短14日間、外部との接触ができない徹底的な隔離と複数回のPCR検査を実施」と、日本で言う所謂「水際対策」、つまり入国者への防疫対策も、書いてあり、重要点を漏れなく網羅しています。紙面の端の小さな記事なのがもったいないような記事です。こうした記事が、もっと早くに出て、また大きく頻回に取り上げられていれば、日本のコロナ対策も違ったものになり、死者もずっと少なかったのではないか、と思われ残念でなりません。

感染者数等のデータ

https://voice.baidu.com/act/newpneumonia/newpneumonia

中国の大手検索エンジンとして、ほぼ寡占状態に近いシェアがある、百度、という企業が提供しているページではないかと思います。私はいつもここで見ています。

このページでは、「全国 总新增确诊/新增境外输入确诊」 が、各日の新規感染者数です。(但し、正確に言えば、中国では、病的表現のない無症状感染者は、このグラフにある「確診者」ではなく、別に集計されているように思われます。この「確診」は、新型コロナウイルスの検査で陽性であり、且つ、何らかの症状がある(本人無自覚で、発熱、咳等は一切なく、単なる肺のCT所見だけが認められた場合等も含む)ことが確定的に診断された人、と理解してよいように思います)。境外输入、と書いてあるのは、大陸の中国以外からの渡航者の感染者数です。总は簡体字で、日本語の「総」と同じです。

https://news.sina.cn/zt_d/yiqing0121?ncovArticleEntrance=1

こちらは、大手ニュースサイト新浪の、感染者数、感染状況のページです。

その他の情報源

基本的事実を知るのに、感染状況をまとめた上記の二つのサイトの他に、お勧めする情報源を、下に書いておきます。

新型冠状病毒感染的肺炎公众防护指南(新型コロナウイルス感染肺炎公衆保護の手引)

国家卫生健康委员会疾病预防控制局 组织编写, 中国疾病预防控制中心 编著 (国家衛生健康委員会疾病予防管理局 組織編纂、中国疾病予防管理センター 編著)

後者の中国疾病预防控制中心は、日本国内で一般に、中国CDCと言われているものと解してよいと思います。

(□ S保護なし)http://www.nhc.gov.cn/jkj/s7915/202001/bc661e49b5bc487dba182f5c49ac445b.shtml

これは、専門家というより、一般公衆向けのガイドライン、という感じの指針だと思われます。

@mdfujita 藤田医師

https://twitter.com/mdfujita

https://note.com/mdfujita/n/n76bf216a4a53

上海在住の日本人の中医内科医師の方(かた)の、ツイッターのアカウントです。

コロナ禍になってからは、ツイートの半分以上が、上海や中国のコロナ対策に関するものになっている感じです。ツイートでは、情報と文章が、ひじょうによく整理されています。他(ほか)の人でも(コロナとは関係のないツイートの話ですが)、これほどに、いつも整理された形で情報発信している人も、ツイッター全体でも、めずらしいだろう、という感じです。ツイートの中の情報の典拠も、しっかりと明示されていることが多く、信頼感が高い人です。情報の分量も多く、一日(いちにち)に数ツイート以上、されている感じです。文面から受ける印象だけからですが、ひじょうに穏やかで、感じのよい人のような気がします。ツイッターで、フォロワーが多いと、一般には、時に考え方の違う人たちに対して、嫌な感じを与える事は、ある程度は避けがたいように思いますが、この人は、それもほとんどない印象の人です。大多数の人から信頼されている人ではないか、という感じがあり、中国関係の人には、ほとんどフォローされているような気もしています。その割には、中国在住の日本人や、日本で中国との関わりの多い(多かった)人(ひと)など、中国と関係のある人以外からのフォローは、意外に少ない印象で、たいへんもったいなく感じています。中国や、中国のコロナ対策について情報収集する必要がある、大手メディア関係の方(かた)や、政治家、著述家の人は、フォローされたほうがよい、と切に思います。

本書のこの項目を書くに当たっても、この方のツイートをたいへん多く、参考にさせていただいています。というより、ここに書いていることの基本的な事実は、半分くらいはこの方のツイートで知って、後は自分で調べて記載している、という感じです。負う所が大きいです。

中国に関しては、個別の事実とは別に、全体的な状況がどうか、という事が分かる、信頼性の高い情報源は、貴重です。中国は、少し前まで、発展途上国的に見られていて、世間の主流からはノーマークだったせいか、中国の日常や国内の動きが分かる、日本人による信頼性の高い情報源は、ひじょうに少ないと思います。その点から考えても、この方のツイートは、数少ない、信頼性の高い情報源として、得難いものです。ほとんどの中国関係の日本人がフォローしているのも、そういったところから来ているように思います。また、日本国内の、NHKも含めた、大手メディアの中国報道は、大きな事件の事実関係についての報道内容は、一般的には信頼できるものの(注参照)、それに対する、それらのメディアからつけられる解説や見方は、私の見てきた限りでは、当てにならなかったり、おかしいと思うものが、かなりの比率である、という印象を受けています。一方で、大見出しになるような、社会の大筋以外の、中国社会の細かな事実の報道は、日本では、ほとんどないので、その面では、中国語が分からない方(かた)の場合は、この方のツイッターのような、信頼できる情報源から、補う他ないように思います。

なお、前述したように、この方(かた)が、ツイートを読んだ人に、感情的な反動を少しでも感じさせる書き方をすることは、ほんとうに最小限で、それ以上、表現の仕方がない、と思われる時しかない、と思われるほどなのですが、それでも、時には、意見をはっきり述べられることがあります。2021年1月20日のツイートで、あくまで、直接に、現地の原語の情報が取れるように、外国語を習得することは大事だ、という文脈においてですが、「特に中国に関しては日本からの情報は殆ど使いものにならない」、との文章がありました。これは見た時、へえー、この人にしても、こう言わせるのか?、というか、日本国内の中国に関する報道は、この人にも、このようなはっきりした言葉遣いをさせるもの(クオリティーの低さとか量の少なさ)があるんだ、と思いました。私のこの本では、日本国内の中国報道に関して、問題がある、ということは、最小限しか言っていませんが、私の印象でも、中国在住の良心的な日本人の間では、押しなべて、日本の中国報道は、ひじょうにおかしく、正しく(ただしく)現状を伝えていない、と思われている、という感じを受けています。まあ、ただこの方の言っているのは、日本国内での、中国のコロナ対策に関する情報、についてのことである可能性もあるかもしれませんが。

(注)日本の大手メデイアの中国報道は、前述のように、大きな事実に関しては、だいたい信頼できると思っています。しかし、それでも、国内報道と比べて、私が見て、事実関係の認定において、危うい、不正確でないか、と思われるものが時々あります。一例を挙げましょう。、毎日新聞の、2021年1月1日、元日の一面記事 https://mainichi.jp/articles/20201231/k00/00m/040/137000c で、中国政府が、新型コロナウイルスに対する中国製ワクチンを日本の富裕層に利用可能にすることで、「中国側がワクチンをテコに影響力拡大を狙っている姿が浮かんだ」、また、そのワクチンは「中国共産党幹部に近いコンサルタントの中国人が持ち込んでいる」、と書いています。しかし、何をもって、そう書いているのか、分かりません。ちなみに、その後、2021年2月15日の朝日新聞の記事 https://www.asahi.com/articles/ASP2H6JTXP2HUHBI029.html は、「中国国営新華社通信は15日、中国で昨年以降、新型コロナウイルスのワクチンの偽物を製造したり、販売したりする不正を相次ぎ摘発したとする最高人民検察院(最高検)の発表を伝えた」、と伝え、また、「海外に送られた例も確認された」、としています。この二つの報道を見て、皆さんは何か感じられないでしょうか。私から見ると、このように、大手メディアの記事でも、中国に関する記事ではは、信憑性が疑われるものが散見されます。毎日新聞のこの記事に関しては、誤報ではないか、というのは、単なる私の推測で、本当にそうかどうかは分かりようもありませんが、いずれにしても、私は、中国政府が日本国内で、一部の富裕層などに中国製ワクチンの接種をして、日本国内での影響力拡大を測っている、という見方は、誤解だろう、と思っています。(なお、本書のシリーズの第3巻では、このような、日本の中国に関する報道で、問題があるように感じられる具体例を、多数例示して、分析する予定です)。

https://www.insideasia.click/entry/2020/03/01/200515

中国に二十年以上滞在の作家 谷崎光がまとめた、20年3月1日時点での中国のコロナ対策のリストです。民間の対策と、政府が関わっている対策の両方がリストされています。

77項目にも渡って、箇条書きで、基本的には事実のみが、よくまとめられています。箇条書きのため、読みやすいです。

この方は、商業ジャーナリズムの作家の方(かた)です。作家になる前の前職は商社勤務です。文章の書き方は、前述の上海の中医の方(かた)の、細部まで整理された、医者らしい、正確性を担保するのが習い性(しょう)になったような書き方とは違い、ざっくりな感じの筆致が、持ち味の人です。そのため、人によって好き嫌いもあり、評価しない人もありますが、私はかなり参考になっています。関西出身者の、形式より「実(じつ)を見る」、感じが強くあります。それほど、言葉の端々まで、正確性を重んじるタイプの性格の人ではないかもしれないので、(数字などについてでなく、判断等についての話ですが)、微(び)に入り細にわたって、科学者や新聞記者の記述を読むような感じで、全部、定規でミリ単位まで測ったように正確だ、と思って読むような読み方には、適さない人かもしれません。全体に、言い方がざっくばらんなので、考えや感性の違う人(嫌中の人は特に)、には時に敬遠されがちですが、日本人にしてはひじょうに珍しく、何でもオブラートに包んだり、婉曲な言い方をしないため、それだけに、実際の状況はよく分かる感じです。

中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか?

山谷剛史 星海社新書

本書の別の付録でも紹介している書籍です。そちらで詳しくご紹介しましたので、ここでは書名の紹介だけに留めます。新型肺炎対策で、中国で、ITがどのように活用されたのかが、詳述されています。

武漢日記 方方著 飯塚容、渡辺新一訳 河出書房新社

湖北省作家協会の主席だったこともある1955年生まれの、武漢現地の作家、方方による、ブログとして発表されていた2020年の1月から3月の時期の日記です。ちょうど、だいたい武漢が都市封鎖された時から、それが解除されるくらいの時期の日記で、基本的にコロナ蔓延下の武漢の生活をテーマにした日記です。通して読むと、当時の武漢について、また地方政府、中央政府の動きについて、かなりいろいろなことが分かります。帯の文句だけ見ると、政府批判の書ではないか、という気にもなるのですが、これは、中国関係の本を出す場合の日本の出版社の約束事、というか、題名、帯、広告で、見かけを中国政府批判本のようにして出して売上を確保する、という目的から来ている感じがします。たしかに地方政府批判はありますが、そういう性質の本ではありません。教養のある庶民の目線での当時の詳しい生活記録、という感じです。

単に、コロナ下の武漢の生活を知る、ということの他に、この本を通読すると、中国の都市生活者が一般にどんな生活を送っているかを知ることが出来るという点で、そうした観点からも貴重な本だと思います。だいたい中国に関する本は、政治、経済、外交、産業、ITなど、大上段に振りかぶった本が多く、一般庶民の生活が生活感を伴ってなまなましく分かるような本は、日本でほとんど出版されていないからです。三百ページ近くあって、かなりの内容です。

その他、中国のコロナ対策について、いろいろな報道を参照する場合、新浪(https://www.sina.com.cn/)、凤凰(http://www.ifeng.com/)、腾讯(日本ではテンセント名)(https://www.qq.com/)、 财新(http://www.caixin.com)などは大手企業で、基本的に信頼できると思います。また前出の、上海の中医の方(かた)がよく引用されている、澎湃(https://www.thepaper.cn/)も、あの方がよく引用するから、という理由でですが、恐らく基本的に信頼できるものと思います。

なお、特にこれらのサイトを挙げていますが、これら以外のサイトに掲載されている情報が信頼できない、と考えている、という意味ではなくて、私の知っている中国の大手ニュースサイトをいくつか挙げると、上記のようになる、という意味です。なお、中国国内の報道では、ちょうど日本でも、報道各社の報道がYahooのポータルサイトに転載されているのと同じ様な感じで、記事を作成したメディアとは、違うサイトの運営者がその記事を掲載している場合が、よくあります。こうしたことは、日本で以上に、中国ではひじょうに多い印象です。また、日本の場合、ニュースでよく使われる語彙や、各種の基本的事実については、政府も含め、誰か、あるいはどここが、それらの語彙や情報を詳細に整理してネット上で公開している場合が多いように思います。一方、中国の場合は、私の印象では、社会全体に、「実際にまわっていればそれでよい」、という考え方が強い感じがあり、憲法や法律など以外は、正確な典拠や定義は見つけづらい、という場合が、時にあるように思います。私個人の感想ですが、中国語での情報に関しては、あまり物理学者が真理を追い求めるような態度を取らずに、色々な情報を見て、複数の情報源の情報を比較考量して、自分の頭を使って、総合的に考えて判断する、というのが、情報収集のコツではないか、と思っています。

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以上は、「中国のコロナ対策」全体、約10項目強のうち、冒頭一項目の、中国のコロナ対策を調べる場合の情報源に関する記述です。他の項目は以下の通りです。

・感染状況概況

・新型肺炎関連の中国語基本語彙

・PCR検査

・隔離 (入国時の隔離 +感染者が発見された地域での隔離)

・エリア分け

・マスク

・消毒

・コロナアプリ

・真剣度

・人の移動の制限と、封閉(封鎖)

・感染者のリンク追跡

これらの内容は、一定部分ずつ、全編を、逐次こちらに転載、公開していくつもりです。

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