中国のコロナ対策 part2 — China vs Covid19: PCR, Situation, Words

John Nan
Jul 7, 2021
Photo by Damian Patkowski on Unsplash

感染状況概況

中国の感染状況には、2019年12月の発生から、2021年の2月初旬までに、だいたい三つの山があった、と考えてよいと思います。最初に挙げた、百度の感染状況に関するページのグラフで見ていただくと分かりますが、第一の波が、2020年の1月と2月、第二の波は、同年7月中旬から8月中旬、第三の波は同年11月末から本書の出版時期(2021年2月初旬)まで、という感じです。この三つの波のうち、第一の波は、皆さんご存知の通り、ひじょうに大きなものでした。これに対して、第二、第三の波は、感染者数は、第一の波の時より、はるかに少なくなっています。第一の波が終わった後の、一日(いちにち)の新規確定診断者数は、2020年7月30日の、中国全土で276人、が最多です。中国は、人口が約14億人と日本の10倍以上なので、一日(いちにち)の新規確定診断者数が276人、というのは、日本でいえば、一日(いちにち)の有症状の新規感染者数が25人以下、に近い、感染状況であるといえます。

なお、中国では、単なるCT所見があるだけ、というようなケースも含め、新型コロナウイルスによる症状が出ていることの診断のついた有症状の感染者と、単に感染してウイルスを保持しているだけの無症状の感染者を、データ上分けて管理しているようです。このため、両方を足すと、第一の波が終わった後の、一日(いちにち)の新規感染者数が、一般的な有症状と無症状の感染者の比率から推測して、最多の時で合計で400人くらいだった可能性もあると思いますが、いずれにしろ、人口が、日本の10倍以上ですから、日本での40人以下相当、と言えます)。

ですから、感染者数から言えば、ここで私が言っている、中国の二波、三波(さんぱ)は、日本で「第二波」、「第三波」、という時の「波」とは性質が違うもので、単に、中国国内の、第一波の時以外の、ほとんど感染者がいなかった、他の時期との比較においての、「波」である、という感じです。2021年1月の、日本全国の一日(いちにち)の新規感染者数は、ほとんどの日で、三千か四千人を越えている、と思いますので、平均すると、人口比では、これら、中国の二波、三波の時期の中国の一日の新規感染者数は、日本の第三波の時の、何百分の一程度、となっています。

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このMedium記事は、2021年2月26日にAmazonで出版した私の本、「ライブSNS時代の中国:人・街・笑顔」、からの転載です。全部で10章構成のうち、本文の10章以外に5つつけた付録のうちの付録3「中国のコロナ対策」の一部です。(多少本のバージョンを修正しています。) 付録3には、10項目程度あって、この記事は2項目めから4項目目あたりです。他の項目のリストは、煩瑣になるので、この文末にリストしておきます。

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なお、中国国内の、武漢での感染が中心の第一波の当時は、日本では感染者がほとんどいなかったことから、日本人には、その頃、中国全土がたいへんなことになっていた、という印象がありますが、実際には、当時の感染者は、大部分が湖北省の武漢と、その周辺にかたまっていました。上海や北京も含め、他の都市では、あまり感染者は出ていなかったように思います。中国は、日本とは桁違いに人口が多く、省都クラスの都市は、多くが人口が数百万人以上の大都市です。それだけの人口がありながら、当時の湖北省以外の、中国各都市の確定診断者数は、2020年の1–2月の累計で、数百人以内とか、そんな感じだったような気がします。(これは調べると時間がかかるので、自分の記憶での感じです)。

武漢で最も感染状況がひどかったのは、二月中旬くらいではないかと思います。例えば、上海では、こちらの閩南網、というところに掲載されている、健康上海12320、というところの 2020年2月11日の報道、(□ S保護なし)(http://www.mnw.cn/news/shehui/2248840.html)、によれば、同年2月10日までの、上海市の累計での確定診断病例は、302例に過ぎません。また、2020年2月10日12—24時の新規確定診断病例も、上海市の常住人口のうち3例、としています。上海市の2019年の常住人口は、約2400万人なので、これは、どちらもとても少ないです。北京については、こちらの本地宝というサイトの報道(□ S保護なし)(http://bj.bendibao.com/news/2020212/269266.shtm)(2020年2月12日)によると、同年2月10日24時までの、北京市の累計の確定診断病例は、342例。2月10日の一日の新規確定病例は、5例です。北京市の2019年の常住人口は、約2150万人です。

このように、武漢のある湖北省以外の都市での感染者は、相当少なかった、とはいうものの、都市によって、団地からの一定の出入り制限があったりして、私の友人がいる都市では、どこも憂鬱な気分が広がっていた感じでした。一時期は、SNSも友人の投稿は、ほとんどがコロナ関連、といえるような状況でした。それが、記憶では、3月に入った頃か、霧が晴れるように、コロナ関連の投稿が、うそのように急速になくなった、という気がしています。

新型肺炎関連の中国語基本語彙

新型肺炎関連の中国語基本語彙をリストしておきます。

上から、中国語、中国語の発音記号であるピンイン、日本語の順です。

新冠肺炎

xīnguānfèiyán

新型コロナ肺炎

疫情

yìqíng

疫病発生状況(感染とコロナ関連状況の感じ)

无症状

wúzhèngzhuàng

無症状

确诊

quèzhěn

診断が確定した(人)

(注参照)

密切接触者(密接)

mìqièjiēchùzhě(mìjiē)

濃厚接触者

次密接者

cìmìjiēzhě

二次濃厚接触者

一般接触者

yībānjiēchùzhě

一般接触者

核酸检测

hésuānjiǎncè

PCR検査

*恐らくPCR検査、と解してよいと思います。抗体検査、抗原検査、を含まないことの確信まで持てませんが、以下のサイトの説明を見るに、抗体検査、抗原検査は、それぞれ抗体检测,抗原检测と、別に呼ばれているように思えます。

「一篇文章看懂新冠病毒核酸检测、抗体检测、抗原检测有何区别」筆者:基生兽2020–10–15

(□ S保護なし)https://www.sohu.com/a/424773866_120083627

「新冠病毒核酸检测、抗体检测、抗原检测有何区别?」

观察者网 2020年3月4日

https://baijiahao.baidu.com/s?id=1660200639815099779&wfr=spider&for=pc

筛查

shāichá

スクリーニング検査

隔离

gélí

隔離

阳性

yángxìng

陽性

阴性

yīnxìng

陰性

境外输入

jìngwàishūrù

(日本人の考える)大陸中国に、外部から入った感染者。

私の論理的推測としては、具体的には、空港での検査か、隔離期間中の検査などで発見された感染者なのではないかと思います。

*中国では、出入国管理上、香港、マカオ、台湾は「境外」、それ以外は「境内」となっています。

高风险地区

gāofēngxiǎndìqū

高リスク地域

*中风险地区低风险地区、もこれに準じます。

康复

kāngfù

回復

出院

chūyuàn

退院

医学观察

yīxuéguānchá

医学観察

濃厚接触者を、最長の潜伏期間の間、隔離して、健康状態と、感染、発病がないかを観察すること

注:确诊quèzhěn(日本語漢字では「確診」)ですが、これは、確信はありませんが、おそらく以下のようなことだと思います。

こちら(https://baijiahao.baidu.com/s?id=1662191071134392347&wfr=spider&for=pc)(2020年3月26日の「広東衛生在線」というメディアによる、「央視新聞」の記事の掲載)(央視新聞、は中国国営放送系のメディアです)、のページで、中央指導グループ専門家メンバー童朝輝、という人による説明内容が掲載されています。

この人によると、無症状の感染者は、二種類に分けられ、一つは、確診病人であるが、発熱、呼吸器の症状はなく、CTをして初めて問題の見つかる感染者で、これは、確診病例とする。もう一つは、真正の無症状感染者で、PCR検査で陽性であるが、症状がなく、CTをとっても問題がなく、肺炎に該当する表現がないもの、と言っています。この説明から考えると、PCR検査で陽性で、体内にウイルスの存在が認められた人の内、ウイルスによる病的表現があるのが「確診病例」、で、ウイルスによる病的表現がないのは、確診病例には分類されず、「無症状感染者」、として別に分類される、ということではないか、と思われます。中国語では、確診病例、という表記になっている場合が多いので、ウイルスが体内にいて、且つ(単なるCT所見だけ、のような例も含めて)病気である、と診断されたものが、「確診病例」、略して「確診」で、単にウイルスが体内にいることが、PCR検査で確認されているだけで、病気ではないものは、「無症状感染者」、ということではないかと思われます。

「新型肺炎関連の中国語基本語彙」、の項目は、以上で終わりです。

PCR検査

中国語では、「核酸检测(核酸検測)」と言われています。钟南山が2000年代前半のSARSの時から、「早期診断、早期隔離、早期治療」、を唱えているせいか、中国では、感染が発生した地域で 数十万人から最大一千万人くらいまでの、その地域一帯の全住民を対象とした、大規模な一斉のPCR検査が行われている例が、かなりあります。これも、五日とか、七日くらいの短期間での検査で、しかも同一の住民に対して、複数回行われている場合が多いようです。中国在住の日本人の方たちが、ツイッターに投稿されている沢山の写真を見ると、検査は、屋外の広場のようなところで行われている場合が多いような印象があります。検査には、一般的な検査と、スクリーニング検査があるようです。スクリーニング検査で疑いが見つかった場合は、一般的な検査をする、という流れの場合もあるように思われます。

以下の4つは、大規模PCR検査に関する報道の例です。系統だった紹介ではなく、中国のネットの検索エンジン、百度で検索をかけて、目についたものを、特に整理せずに、単に列挙したものです。

・北京市内で、2020年12月14日から2021年1月24日の間に、1745万人のPCR検査をし、8例の陽性感染者を発見した(中国青年網2021年1月26日)

https://www.sohu.com/a/446768437_119038

・青島市で、5日間に全市の九百万人に、PCR検査を実施した。(財新網2020年10月12日)

(□ S保護なし) http://www.caixin.com/2020-10-12/101613800.html

・大連市で、2020年12月22日の早朝から 23日の18時にかけて、213万人のPCRスクリーニング検査を完了した。(10合1混採技術を採用、とありますので、おそらく、10人分を一つの検体として検査する方式での、スクリーニング検査と思われます)(2020年12月24日の新華社の報道を、腾讯網が掲載)

https://new.qq.com/omn/20201224/20201224A0GGF600.html

・河北省石家庄市の中・高リスクエリアと隔離地区について、全員のPCR検査をし、約371万人の検体を採取した。累計の陽性例は8例。

2021年1月27日北青網新聞、というところに掲載された北京日報の記事

(□ S保護なし)(http://news.ynet.com/2021/01/27/3120327t70.html)

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以上は、「中国のコロナ対策」全体、約10項目強のうち、冒頭一項目の、中国のコロナ対策を調べる場合の情報源に関する記述です。他の項目は以下の通りです。

感染者数等のデータとその他の情報源 (公開済み クリックで表示)

・感染状況概況 (本内容です)

・新型肺炎関連の中国語基本語彙 (本内容です)

・PCR検査 (本内容です)

・隔離 (入国時の隔離 +感染者が発見された地域での隔離)

・エリア分け

・マスク

・消毒

・コロナアプリ

・真剣度

・人の移動の制限と、封閉(封鎖)

・感染者のリンク追跡

これらの内容は、一定部分ずつ、全編を、逐次こちらに転載、公開していくつもりです。

以下は、中国のコロナ対策ではなく、日本のコロナ対策について書いた内容です。

検査抑制論と、抑制を主張した主な専門家、及び論者:コロナ新型肺炎とPCR検査 part 1

厚労省, 田村厚生大臣, 押谷仁東北大学教授(以前の専門家会議、且つ分科会のメンバー), 岡部信彦分科会会長代理・内閣官房参与, 岩田健太郎神戸大学教授, 等の発言、記事について、分析しました。

検査抑制論と、抑制を主張した主な専門家、及び論者:コロナ新型肺炎とPCR検査 part2

以前の専門家会議、現在の分科会の、尾身茂会長の無症状者へのPCR検査抑制姿勢ついて、第一回分科会の資料等を元に論評しました。

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