中国のコロナ対策 part3 — China vs Covid19: 隔離、エリア分け、マスク、消毒、コロナアプリ

John Nan
Aug 10, 2021
Photo by zhang kaiyv on Unsplash

隔離

これは、かなり徹底して行われているようです。

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中国のコロナ対策(part1–4に分けているので、本文に入る前に、先に全パートへのリンクを紹介しておきます)

part1 情報源(中国のコロナ対策について調べる場合に参考になる各種情報源について紹介)

part2 感染状況概要(時系列で説明), 新型肺炎関連の中国語基本語彙(日中対照), PCR検査実施状況等

part3 隔離、エリア分け、マスク、消毒、コロナアプリ

part4 封閉(封鎖 or ロックダウン), 感染者リンク追跡, 真剣度

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入国時の隔離

香港、マカオ等からも含め、我々が考える大陸の中国に入境した場合、コロナウイルスの感染の有無に拘わらず、最低2週間の強制隔離となります。国全体のはっきりした規定は見つけられませんでしたが、各種報道を見るに、蔓延が起こった初期の頃は、あるいは違うのかもしれませんが、少なくとも2020年3月くらいからは、地方により隔離期間に差はあるものの、基本的にずっとそうなっているようです。ホテルは、指定されたホテルでの隔離となり、日本のような、本人にまかせた自主隔離、とはまったく違うようです。なお、香港から戻った友人から聞いたところでは、その友人の上海での隔離の宿泊費用は、本人持ちで、日本円で約七万円程度のようでした。中国に入国した場合の、中国国内での隔離は、ツイッターなどで見ている限り、ホテルで自由に生活するのでなく、いわば部屋に籠もっていることを求められ、食事も届けられ、食事を持ってくる人も、防護服を着た完全装備の人で、宿泊中に接触する人で、防護服を着ていない人はない、というような状態のようでした。

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このMedium記事は、2021年2月26日にAmazonで出版した私の本、「ライブSNS時代の中国:人・街・笑顔」、からの転載です。全部で10章構成のうち、本文の10章以外に5つつけた付録のうちの、付録3「中国のコロナ対策」の一部です。(多少本のバージョンを修正しています。) 付録3には、10項目程度あって、この記事は5項目めから9項目目あたりです。他の項目のリストは、煩瑣になるので、この文末にリストしておきます。

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感染者が発見された地域での隔離

感染が多数発生した地域では、小区が封鎖(封閉)されている場合があるような気がします。「小区」とは、第0章でも取り上げましたが、日本でいうと団地のようなものです。低層の団地のような外観のタイプのものと、高層マンションが数棟から数十棟くらい、固まって林立しているタイプのものがあります。これは、コロナとは関係なく、以前からずっとそうなのですが、中国の小区は、防犯上の理由からと思いますが、門に二、三人の警備員がいて、塀で囲まれているところが多い印象です。出入り口の数が限られているので、結果的に、小区を封鎖するのは、物理的に容易である場合が多いように思います。中国の地域社会には、居民委員会、という住民の自治組織があります。これと、小区の管理会社、地区の共産党が協力して出入管理をしているのではないかと思います。一日(いちにち)や二日の間に、一家族当たり出入りできる人数、回数を制限したり、稀にリスクが高い小区の場合は、リスクが下がるまで、基本的に完全に出入りを止めたりしているようです。その場合、食料や日用の必需品は、地区の居民委員会や共産党のボランティアなどが、運び込んで配布しているのではないか、と思います。なお、中国では、感染発生箇所では、徹底してPCR検査を行っており、前出の藤田医師によると、中国では感染者は、無症状者も含め、必ず専門病院に隔離入院(2021年1月22日ツイート)、ということなので、小区内に感染者がいるのに、封鎖して出られなくなる、ということではまったくないので、その点はご注意ください。

エリア分け

中国のコロナ対策の一つの特徴は、感染状況に関して、以下の3つのエリア分けをして、管理がされていることのように思います。

具体的には以下の三種類のエリアがあります。

低风险地区 低リスク地区

確定病例がないか、直近の14日間連続で、新規確定病例が出ていない地域

中风险地区 中リスク地区

直近14日間以内に、新規確定病例が出ている。累計確定病例が50例未満、または50例以上だが、直近の14日間以内に感染のクラスターは発生していない地域。

高风险地区 高リスク地区

累計確定病例が50例以上で、直近の14日間以内に感染のクラスターが発生している地域

以上の分類分けの説明は、以下のページによります。

http://www.wuhan.com/xinwen/40249.html (2020年3月22日「武漢生活網」、が、国の衛生健康委員会疾病予防管理局一級巡視員の賀青華の説明として紹介しているもの)

上記の各等級のリスクエリアに対して、それぞれ、どのような管理が行われるのかについては、「风险地区 措施」、などのキーワードで検索してみましたが、全国統一的なものは見つけられませんでした。 環球網(2020年2月25日)の、こちらのページを見るに、https://baijiahao.baidu.com/s?id=1659495379738844620&wfr=spider&for=pc 分かることは、低リスクエリアの防疫措置は、一般的なもの。中リスクエリアでは、コロナの患者と濃厚接触者を、厳格に、管理、治療、隔離し、地区からの出入りは制限される場合がある。高リスクエリアでは、区域内での拡散、区域外への拡散を厳格に管理し、人の集まる活動は停止、交通を規制し、外部との出入りを止める、といったことのようです。

ネットを色々検索する限り、各リスクエリアに対して、それぞれどのような措置を取るかは、地方政府の裁量と、実際の感染状況などにより、ケースバイケースであるような印象を受けました。いずれにしろ、このように、リスクエリアに細分されていると、リスクの度合いに応じて、特定地域にだけ、特定の措置を取ることができるので、対策が容易になる、と感じられました。PCR検査も、このリスクエリアを考慮して、行われているように思われます。

マスク

大部分、不織布マスクが使用されていると思われます。前掲の「新型冠状病毒感染的肺炎公众防护指南」、では、「24. マスクの選び方」、で、呼吸器の伝染病予防に適しないマスク、として、布マスク(保温目的)、新材料マスク(防塵)(形状からウレタンマスクのことと思われます)が、明記されています。

上海の中医の方のツイートでも、上海の地下鉄で見るのは、圧倒的に不織布マスク、まれに、もしくは、たまに、ウレタンマスク、布マスクはほぼゼロ、という意味のツイート(2021年1月8日)をされています。また、前出の谷崎光は、noteのこちらの、2021年1月3日の記事(https://note.com/tanizakihikari/n/nd92ff0f4be1b)で、「防疫には効果のほぼないウレタンマスクや布マスク。中国では最初からアナウンスが行き届き農民工ですらしていない。北京で一番マスクがない時ですら、コンビニでウレタンマスクは売れ残っていた」、として、日本でなぜ多くの人がウレタンマスクをしているのか、と嘆いています。だいたいこんな感じですので、中国の大都市では、ほとんど不織布マスクが使われているのではないか、という印象を受けます。

地下鉄や、市内のバスに乗る時に、マスク着用が必要かどうかは、地域によって、ばらつきがあるようです。地下鉄で乗車について対策がされている場合は、入場時に、非接触型の体温計で体温を測ってもらい、 また、別に説明する、スマホアプリ上の健康コードを係員に見せるか、アプリで地下鉄の安全検査所にあるQR コードをスキャンして健康コードを表示する必要があります。 体温測定、健康コード、マスク、は、中国語で、测温扫码戴口罩(cèwēn sǎomǎ dài kǒuzhào)、として語呂がよく、セットになって理解されている感じがあります。

消毒

日本と中国のコロナ対策で、姿勢が大きく違うように感じることに、消毒があります。前掲の谷崎光のツイッターのツイートには、沢山の消毒に関する言及や、消毒作業の写真が出てきます。この人のツイッターのアカウントは@tanizakihikariなので、「@tanizakihikari 消毒」の2語でツイッターを検索してみてください。とても沢山の、消毒に関するツイートや写真が見られます。

道路の消毒、地下鉄の構内と車両の消毒、飲食店でのテーブルなどの消毒、などが行われています。また、この人のツイートにはあまり出てきませんが、感染者が見つかった、リスクが高いと思われる地域で、場所(建物内部や施設に対してだと思いますが)に対する消毒も、行われているようです。

コロナアプリ

だいたい皆さんご存知のことと思いますが、中国では健康吗(jiàn kāng mǎ)(健康コード)といって、コロナウイルスの防疫について、国民を、スマホのアプリの画面上に表示される、緑、黄、赤の三色のコードで、管理しています。

これは、概略を言えば、支付宝(支払い用スマホアプリ)、または、微信(チャット兼支払い用のアプリ)内のミニアプリ、もしくは、単独のスマホアプリ、として提供されているスマホアプリを通じて、実名登録し、健康コードを取得し、通行、入場、等に際して、取得した三色何れかのコードを提示することで、第三者によるリスク評価や、政府による防疫管理を可能にしているシステムです。

なお、この本の、このコロナアプリの項目は、個人のSNSへの書き込みも含めて、ネット上に散らばっている様々な情報を、私が総合的に評価して記述しているものです。一部に間違いや、誤解がある可能性もあることをご了承願います。

その上でですが、少なくとも2021年1月までの段階では、総称して「健康コード」、といえるこのシステムは、地方政府単位で運用されてきています。アプリ自体、例えば広州市では、「粤康码」、または、「穗康码」、が使用されており、上海市は「随申码」、というように、アプリの名前自体、異なっています。また、支付宝内のミニアプリなのか、微信内のミニアプリなのか、両方あるのか、あるいは単独のアプリなのか、も、地域によるようです。2021年1月中旬現在、全国的に統一する方針が示されているようですが、今のところは、このような状態であるようです。

コードの取得は、支付宝、微信、或いは新規にインストールしたアプリを通じて登録ページに入り、現在の所在地、最近14日間に所在地を離れた事があるかどうか、隔離中であるか、感染確認されてから14日未満しか経過していないか、発熱があるか、呼吸器の症状があるか、などをアプリ上で自己申告し、間違いないことを誓約した上で、発信すると、システムから、緑、黄、赤のいずれかの健康コードが、QRコードを表示する形で取得できます。以上は、主に浙江省の健康コードの例に従って説明していますが、登録とコードの取得方法は、大まかには似たようなものであるものの、細かい点は、地方政府によって、各システムで随分差があるようです。この辺りは、ツイッターアカウント@borgen1973の方が、こちら(https://mp.weixin.qq.com/s/6FHQCs7z6UdRnRMJMd4BSA)のブログで書いておられるのを見ると、色々バリエーションがあるのが分かります。

各色のコードは、どのような分類になるかは各地方、各アプリによってかなり異なるようです。一般的に言えるのは、緑は心配されるような要素がなく、通行可能。黄色は不安材料がある(例:7日以内の隔離中、危険地域から来た等)。赤は高リスク(例:感染者である、14日の隔離中等)。というような感じと思います。黄色と、赤について、括弧内に挙げた例は、あくまで例で、地域、アプリによって、基準はまちまちなようです。赤は、もちろん隔離か移動制限だと思いますが、黄色もだいたいは隔離対象なのでは、という気もします。

ネットで見た、個人の書き込みなども含めた色々の情報から判断するに、どの分類(色)のコードになるかは、自己申告した情報と、身分証(外国人の場合はパスポート)番号で紐ついた他の情報(医療機関受診歴や、高速鉄道、地下鉄などの利用履歴)を、システムが総合的に評価した上で、返されるように思われました。前掲の、山谷剛史の中国のコロナ対策でのIT利用に関する本では、スマホのGPSの位置データも評価されている、という意味の記載がありました。

これから分かるように、中国の健康コードは、スマホから出るブルートゥースの信号をやり取りした結果に基づいて、感染者と濃厚接触があったかどうかを判定する、日本のCOCOAの接触アプリとは、違った考え方、原理に基づくものです。

健康コードの提示が必要となる場合がある場面は、地下鉄、高速鉄道、バス、空港などの利用、小区、学校、オフィスビル、映画館などの娯楽施設、大型のショッピングモールもしくはスーパー、観光地の施設、などへの入場、などです。どのような場面で、提示が必要とされるかは、地域によっても、施設によっても、また感染状況によってもずいぶん異なるようです。高速鉄道、空港など、国の交通の基幹的な場所では、必ず提示が必要と思われますが、ネット上で検索して見た、個人の書き込みなども含めた、色々の情報から判断するに、地下鉄、バスなどだと、地域によって、求められたり、必要なかったり、また、同じ地域でも、各時期の警戒の度合により違う、という状況のように思われます。小区への入場については、通常時は、提示を求められているところは少ないのではないか、という印象がありますし、ショッピングモールなどでは、近隣地域で感染例が出るなど、警戒感が高まった時だけ、提示が求められているのではないか、という気もします。

ですので、2021年1月現在までのところ、この健康コードのシステムは、取得したコードが、緑、黄、赤、なら、それぞれ何ができて、何をするのに必ずコードの提示が必要、というようなことを規定したシステムではなくて、地方政府や国が、場所や感染状況に応じて、個人のリスクを評価できるようにするための、多用途の一つの道具、といった位置付けであると思われます。

なお、中国のコロナ対策全般について、既存大手メディアの紹介はひじょうに少ないですが、以下のものは優れた記事ですので、私の記事のpart1情報源編でも紹介しましたが、再度挙げておきます。

2021年6月3日 NHK News Web
記事タイトル: 中国のコロナ対策 カギを握る徹底した監視と水際対策

「監視」という言葉は、昨今の中国に対する論調を考えての、読んでもらう、またはクリックしてもらうための「釣り」のような感じです。焦点はそこになく、中国のコロナ対策全般を詳しく、また私が思うにかなり正確に解説しています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210603/k10013065171000.html

2021年5月4日 朝日新聞 平井良和

「中国2.6億人移動 5連休 コロナ前の水準に」

web記事がないので、少し引用します。

2020年『6月、早くも無症状者も含めた「新たな市中感染者ゼロ」の日を記録。今年4月に発覚した市中感染者も一地域で集団感染した約80人のみだ。大規模なPCR検査と、感染者が出た地域の封鎖を徹底、発覚から数日で検査数は1千万人超に上ることもある 』。このように感染状況と検査の徹底について簡潔的確に指摘。「入国者にも指定のホテルなどで最短14日間、外部との接触ができない徹底的な隔離と複数回のPCR検査を実施

斜体部分が記事からの引用。それ以外は私の補足です。

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以上は、「中国のコロナ対策」全体、約10項目強のうち、5項目めから、9項目目までの記述です。他の項目は以下の通りです。

  1. 感染者数等のデータとその他の情報源 (公開済み クリックで表示)

2. 感染状況概況

3. 新型肺炎関連の中国語基本語彙

4. PCR検査

以上、2–4は公開済みです。「2–4を表示」(左記をクリックで表示)

5. 隔離 (入国時の隔離 +感染者が発見された地域での隔離)

6. エリア分け

7. マスク

8. 消毒

9. コロナアプリ

以上、5–9 は本記事の内容です。

10. 真剣度

11. 人の移動の制限と、封閉(封鎖)

12. 感染者のリンク追跡

残りの10–12 の部分の内容も、追って、こちらに転載、公開していくつもりです。

以下は、中国のコロナ対策ではなく、日本のコロナ対策について書いた内容です。

検査抑制論と、抑制を主張した主な専門家、及び論者:コロナ新型肺炎とPCR検査 part 1

厚労省, 田村厚生大臣, 押谷仁東北大学教授(以前の専門家会議、且つ分科会のメンバー), 岡部信彦分科会会長代理・内閣官房参与, 岩田健太郎神戸大学教授, 等の発言、記事について、分析しました。

検査抑制論と、抑制を主張した主な専門家、及び論者:コロナ新型肺炎とPCR検査 part2

以前の専門家会議、現在の分科会の、尾身茂会長の無症状者へのPCR検査抑制姿勢ついて、第一回分科会の資料等を元に論評しました。

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